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Let’s HDR! Vol.3 「HDRはどうやって見る?」

3 HDRはどうやって見る?

制作したHDR作品を多くの人に見てもらうには、どのような方法があるでしょうか。

放送局に納品する、UHD Blu-rayを制作する、という方法がハイエンドにはありますが、これらは特別な世界ですのでここでは触れず、もっと草の根的な手段を考えてみましょう。

3-1 インターネットの映像公開サービスにアップロードする

YouTubeなどの動画投稿サイトがHDR対応を謳っています。これらを利用すれば、不特定多数の人にHDR作品を見てもらえるチャンスがあります。

その際に注意しなければならない点について、以下にご説明します。

(1) アップロード時に正しくHDRのカラースペースが認識されること

YouTubeは、HLG とPQのコンテンツファイルのアップロードに対応しています。そのためのファイルを制作する際には、第2章の手順に沿って、EDIUSのプロジェクト設定の[カラースペース]には[BT.2020/BT.2100 HLG]または[BT.2020/BT.2100 PQ]を選択し、[ビデオ量子化ビット数]には[10bit]を選んでください。

出力には、[H.264/AVC]または[H.265/HEVC]のエクスポーターを使用してMP4ファイルを作成してください。それぞれ[H.264/AVC MP4 3840x2160 29.97p 10bit]や[H.265/HEVC MP4 3840x2160 29.97p 10bit]というプリセットが用意されているので、これを利用すれば簡単です。「3840x2160」や「29.97p」の部分はプロジェクト設定によって変わります。「10bit」の部分は8bitでなく10bitのほうを選ぶようにしてください。

このようにして作成したMP4ファイルをYouTubeにアップロードすると、次のように表示されて、HDRコンテンツとして認識されていることが確認できます。

(2) 視聴時にHDR対応の視聴環境からアクセスすること

YouTubeのHDRコンテンツを視聴する場合、HDRに対応した環境からアクセスする必要があります。HDR対応の条件には様々なものがあり、注意が必要です。HDR対応とみなされない場合には、HDRコンテンツであっても自動的にSDRに変換されて表示されます。これはこれで綺麗に見えるので、HDR映像を鑑賞しているつもりで、実はSDRに変換された映像を見ていた、ということも起こり得ますので、気を付けましょう。

PCやタブレットなどの端末で見る場合は、それらがHDRに対応していることと、使用するブラウザやアプリケーションがYouTubeのHDRに対応していることが必要です。

Windows PCの場合では、Windows 10の最新のバージョンを使うようにします。グラフィックスボードとそのドライバもHDR対応のものが必要です。表示するディスプレイはHDR10対応のものが必要です。これらの条件が満たされれば、[Windowsの設定]-[システム]-[ディスプレイ]の画面に[HDRとWCG]というスイッチが表示されますので、それをオンにします。

ブラウザには、Google Chromeの最新版を使用します。これでYouTubeのHDRコンテンツを表示し、映像画面右下の設定アイコンをクリックすれば、品質の項目にHDRと表示され、HDRで表示されていることが確認できます。

弊社で確認を行った事例をご紹介すると、Windows 10のPCにNVIDIA Quadro P4000をセットし、DisplayPort経由でDell UP2718Qディスプレイを接続した場合に、Google ChromeでHDR表示することができました。Dell UP2718Qディスプレイは最大輝度が高く、HDRの特徴を十分に感じさせる表示が可能です。

ただし、この場合にはPQコンテンツのみ正しく表示され、HLGコンテンツを表示すると色と明るさが本来のものではありませんでした。Windowsデスクトップの表示がPQ(HDR10)方式に限られるからだと思われます。

あるいは、Windows PCにHDR対応ディスプレイを直接接続していなくても、Androidなどを搭載したHDR TVがあれば、次の方法でYouTubeのHDRコンテンツを表示できる場合があります。

Windows PCとHDR TVを同じネットワークに接続しておき、Windows PC上でGoogle Chromeを使ってYouTubeにアクセスすると、再生画面にキャストアイコンが表示されます。それをクリックしてTV名を選ぶと、TV上で再生が行われるようになります。Windows PCがHDR対応でなくても、TVがHDR対応であれば、HDRで再生されます。

弊社では、TVにSony KJ-49X8000Eを使用して実験を行いました。

このTVはHDR対応であり、また内部にYouTubeアプリを搭載していますが、このアプリからYouTubeコンテンツを視聴すると、HDRとしての再生は行われませんでした。上記の方法でWindows PCのGoogle Chromeからキャストを行うと、HDRとして再生できました。ただし、TVの設定がオートではHDRモードに正しく切り替わらず、メニューから手動でHDRモードを設定する必要がありました。それを行えば、PQコンテンツもHLGコンテンツも正しく再生できました。

3-2 映像ファイルを配布する

不特定多数ではなく、特定のメンバーに見てもらう場合には、映像ファイルを配布する方法も考えられます。その場合のHDR再生の方法についてご紹介します。

(1) TVで再生

すべてのTVがそうだとは限りませんが、HDR対応TVには映像ファイルを直接再生できるものがあります。映像ファイルをUSBメモリやHDDに入れてTVのUSB端子に接続すれば、メニュー操作でファイルを選択して再生させることができます。ファイル内に記述されているメタデータによって自動的にHDR映像であることを判別して、HDR表示を行います。

そのためのファイルとして、[H.264/AVC]または[H.265/HEVC]のエクスポーターを使用して出力したMP4ファイルが使用できます。ただし、上述のYouTubeアップロード用の場合と異なり、H.264/AVCの場合には8bitを使用してください。H.265/HEVCの場合には10bitが使用できます。これは、TVのデコーダは放送受信用に設計されているので、放送に用いられているストリームの形式に合わせることが望ましいからです。放送ではH.264/AVCの10bitは使用されていないので、対応していない場合が多いです。H.265/HEVCの放送は10bitが想定されているので、10bitが可能です。

[H.264/AVC MP4 3840×2160 29.97p 8bit]や[H.265/HEVC MP4 3840×2160 29.97p 10bit]のプリセットを利用すれば簡単です。「3840×2160」や「29.97p」の部分はプロジェクト設定によって変わります。

(2) PCやタブレット等で再生

Windows PCで再生する場合を例に挙げます。前節のWindows PCでYouTubeを視聴する場合と同様に、Windows PCがHDRに対応していることが必要です。また、再生アプリもHDR対応のものが必要です。

弊社で確認を行った事例では、Windows 10のPCにNVIDIA Quadro P4000をセットし、DisplayPort経由でDell UP2718Qディスプレイを接続した環境に、VLC media playerをインストールして、HDR再生を行うことができました。ただし、YouTubeの場合と同様に、PQコンテンツは正しく再生されますが、HLGコンテンツでは色と明るさが本来のものではありませんでした。

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