照明の役割
01 | 照明の役割
ビデオ照明の重要性
ビデオカメラなしでビデオ映像を制作することはできませんが、照明がなくても撮影はできてしまいます。しかし、ニュースなどを除いて、プロの映像制作者は照明をカメラと同じくらい重要だと考えます。実はここに、アマチュアの映像とプロの映像の差があると言えるのです。
ビデオ照明の役割
ビデオ照明には、次のような役割があります。
照度の確保
言うまでも無く、被写体を「十分に」明るく照らすことです。「十分」な照度とは、カメラの感度だけでなく、撮影状況にもよります。例えば逆光下の人物の顔を撮りたい場合、背景よりも明るい照明をあてなければ、顔が暗くなってしまいます。
色彩のコントロール
光源にはそれぞれ固有の「光色」があります。
街のレストランや家庭のダイニングでも、蛍光灯照明よりも白熱電球が好まれるのは、蛍光灯の色が青白い光色のため、食べ物がおいしく見えないからです。一方で白熱灯の光色は黄色に近いので「暖かさ」が失われることなく、食欲をそそる色となるのです。
最終的にカメラに記録される色は、「光源の光色」と、「被写体自身の色」の和となります。つまり、照明には被写体の色を変える役割があるのです。
右の写真で、上は蛍光灯下の映像です。赤いマグロの刺身が、青白い光で照らされると何となくどす黒い感じに見えてしまい、食欲をそそられることもなく、おいしくも感じないでしょう。一方、下は白熱灯下の映像です。刺身の赤色のもつ「暖かさ」が失われることなく、食欲をそそる色となります。
立体感の表現
映像は基本的に3次元空間にある物体を2次元に投影したものです。しかし、視聴者は2次元の映像を見て、3次元空間で起きている出来事として再認識します。ですから、本来2次元である映像が2次元に見えてしまうと、違和感があるのです(変な話ですが)。
そこで、映像に立体感を加えるさまざまな技術や効果が考えられてきました。例えば、背景との区別があいまいな被写体に、背後から照明を当て被写体の輪郭を強調することで立体感を出す手法は、基本的な照明技術のひとつです。
材質感の表現
被写体のリアリティを高める要素が、被写体の材質感です。単なる「凹凸」だけではなく、そこから感じられる「柔らかさ・固さ」、「滑らかさ・粗さ」など、2次的な感覚へ波及するものと言えるでしょう。照明の数、強さ、位置、拡散具合などの微妙なバランスで、そういった材質感を表現することができます。
雰囲気の演出
照明の役割とは、以上の4つの要素を組み合わせて、そのシーンやカットに持たせたい「雰囲気」を表すことと言えるでしょう。それが、単なる「明るく照らす」照明とは異なる、ビデオ照明の重要な役割なのです。