録音の基礎
01 | 録音の基礎
音声の重要性
「クオリティの高い映像作品」とはどんなものでしょう?しっかりとした構図?迫力のあるカメラワーク?雰囲気ある照明?スムーズなカットつなぎ・・・と、多くの人は「映像自体のクオリティ」を考えます。しかし、「映像作品」は映像だけで成り立っているのではありません。映像作品において、もうひとつの大切な要素が「音声(サウンド)」です。
視聴者や顧客に満足してもらえる映像作品を作りたいなら、映像のクオリティと同じくらい(場合によってはそれ以上に)、音のクオリティに気を配る必要があります。
――「映像がガタついたり、途切れたりしても、視聴者から苦情はこないが、音声が一瞬でも途切れるとたくさんの苦情がくる」――とは、ある放送局関係者が話していたことですが、自分を視聴者の側に置いてみれば、「映像作品」がいかに音声情報に頼っているのかが実感できるでしょう。「映像作品」は実は音に依存する部分が多いのだ、ということを常に忘れないこと。アマチュアとプロの映像作品の違いは、画面よりも音声に、より顕著に現れると言えるかも知れません。
音源の3要素
映像作品における音とは、音源という観点から見ると、ことば、SE、MEの3つに分類でき、「音源の3要素」と呼ばれています。音源の3要素を、映像とうまく組み合わせることが、良い映像作品の第一歩です。
では、それぞれ詳しく見ていきましょう。
ことば
私たちが情報を伝達する際、もっともよく使われるのは言語です。言語によって、複雑な内容や抽象的な内容を、客観的に伝達することが可能となるからです。
言語には、文字と話しことばがあります。映像においては、文字はテロップなど視覚的に、話しことば(以後、単に「ことば」と呼ぶことにします)はナレーションなどの音声として使われます。 音声としての「ことば」を映像と組み合わせることで、意味をより深く、正確に伝えられるようになります。これは、「視聴覚モンタージュ」と呼ばれています。さらに、使う語の選択や読み方によって、ことばに感情的・情緒的な意味を加えることもできます。
S.E. (エス・イー)
S.E.(Sound Effect) とは、音響効果の略称で、撮影現場の音や人工的につける擬音のことです。次の例のように、自然音だけでなく、誇張された音、まったく新しく創られた音も含まれます。
音によって、リアリティを増したり、雰囲気を強調したりするものがS.E.です。
・季節感を表す音 ― うぐいすの鳴き声(春)、鈴虫の鳴き声(秋)など
・時刻を表す音 ― すずめのさえずり(朝)、ラーメン屋台のラッパ(夜)など
・現場の状況を表す音 ― 繁華街の雑踏、野球場の声援など
・実際の音を誇張した音 ― サイダーの泡の音、肉がやける音など
M.E.(エム・イー)
M.E.(Music Effect)とは、簡単に言うとBGMです。ことばが主に論理的・説明的な役割を果たすのに対して、M.E.は情緒的な情報を伝えます。ビデオ映像でのM.E.には、次のような種類があります。
・オープニング・ミュージック : 作品の冒頭で、番組の開始と、全体の雰囲気を表す。
・作品の途中で、各場面や場面間のつながりの雰囲気を表す。
…場面の転換
…異なる場面のつなぎ (ブリッジ・ミュージック)
…場面に込めた考え・思い (コメンタリー・ミュージック)
…登場人物の心象
・エンド・ミュージック : 作品の最後に、番組の終了と作品の余韻を残す。エンディングとも。