イマジナリー・ライン
05 | イマジナリー・ライン
イマジナリーラインと「180°ルール」
「イマジナリー・ライン」については耳にしたことがある方も多いと思います。よく例に出されるのが、二人の会話のシーンです。
二人の人物を結ぶ線のどちらか片側の半円(180°)のエリアにいったんカメラを置くと、続くカットもすべて同じエリア内でしかカメラポジションを変えられない。すなわち視点(カメラ)は二人を結ぶ線を越えることはできない、という編集上の作法です。
この二人を結ぶ線がイマジナリー・ラインで、この作法は「180°ルール」とも呼ばれています。
会話におけるイマジナリー・ラインと、カメラポジションの制約
イマジナリー・ラインは二人の会話だけでなく、次のような場合にも生じます。
これらのイマジナリー・ラインも原則として超えてはならないとされています。
2つの、互いに関係する物体の間
例えば、月に向かう宇宙船、コンピュータに向かう人
視線
例えば、フレーム外の「何か」を見る視線
動きの方向
例えば、画面を横切るように走る車
イマジナリー・ラインの越え方
イマジナリー・ライン/180°ルールは、混乱させない映像にするための作法ですが、編集上、どうしてもイマジナリー・ラインを超えたいこともあります。このような場合には、次の方法があります。
- まったく別なカット、シーンを挿入する
- ニュートラル・アクシスからのショットを入れる
- カメラを動かしてイマジナリー・ラインを超える
メリハリのあるカットつなぎ
カットの連続性を満足すれば、どんなカットも違和感なくつながるのでしょうか?
例えば、ある人物の腰から上を映したカットウェスト・ショット)に、少しだけズームアップして同じ人物のお腹から上を映した(ウェスト・ショットとバスト・ショットの中間)カットをつなぐと、違和感が生じます。これは、連続するカットの変化量が小さく、カットを変えた意味が不明瞭なために視聴者に混乱が生じるためです。
20%ルールと30°ルール
連続性を保ちながらも、カットが変わったことを明確にする(そうでなければカットを変える意味がない)、つまりカットつなぎにメリハリを与えるルールが必要です。これが20%ルールです。
20%ルールとは、「あるカットは、前のカットよりも、画面サイズやカメラポジションが20%以上異なっていなければならない」、という経験則です。例えば、画面サイズなら、ウェストショットからバストショット以上、カメラポジションなら被写体に対して30°以上が目安です。
角度の違いは、別途、「30°ルール」と呼ばれることもあります。なお、まったく同一の被写体だけでなく、よく似た被写体をつなぐ場合も、20%ルールを適用するのがよいでしょう。
20%ルール(含、30°ルール)
以上、スムーズなカットつなぎ(連続性/180°ルール)と、メリハリのあるカットつなぎ(20%ルール)の2つが、カット編集で最低限守るべきルールです。
ただし、視聴者の映像に対する感覚も日々進歩しており、視聴者をあきさせないために制作側も新しい映像を考案する必要があります。原則はあくまでも原則であり、ルールを破る新鮮で巧妙な工夫を考えることもまた大切です。