撮影機材
05 | 撮影機材
ここでは、ロケ撮影を想定して、基本的な機材について説明します。
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ビデオカメラ
最近は低価格な民生用カメラでも、業務用カメラと比べて遜色ない品質で撮影ができるようになりました。しかし、業務用機材として使うならば、次のような性能・機能を持っていることが望ましいでしょう。
業務用ビデオカメラに望ましい性能・機能
3板式撮像素子
撮像素子とは光を電気信号に変える半導体のことで、人間の目の網膜にあたるものです。
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撮像素子の種類は長らくCCD(Charge Coupled Device)が主流でしたが、最近はより安価で消費電力の少ない特長を持つ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)も使われ始めています。
いずれの素子でも、低価格の民生用ビデオカメラは撮像板一枚「単板式」が多いですが、業務用は撮像板が三枚ある「三板式」を採用しています。三板式は光の三原色であるR(赤)G(緑)B(青)、をそれぞれ別の撮像板によって信号変換を行うもので、単板式に比べて、サイズ・重量が大きく、高価になりますが、解像度や色彩再現性に優れています。
単板式 | 三板式 | |
---|---|---|
サイズ・重量 | 小さい | 大きい |
価格 | 安い | 高い |
解像度 | 低い | 高い |
色彩再現性 | 低い | 高い |
フォーカス | 低い | 高い |
モノクロ・ビューファインダ
最近は液晶カラー・ビュー・ファインダーを採用しているカメラが多いですが、明度・階調、コントラストやフォーカスの確認は、モノクロ・ビュー・ファインダーの方が高精度に実行できます。
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キャノン端子(音声入力)とファンタム電源供給機能
業務用マイクロフォンの接続部はキャノン端子が標準です。
民生用に使われているミニ・プラグに比べて、確実・安定した接続が行えるので、接触ノイズ(「ジャリジャリ」という電気的ノイズ)が少ないことが特長です。また、コンデンサ・マイクロフォンにファントム電源(12V-48VDC)を供給できるようになっています。
ピーキング機能/ゼブラ・パターン機能
ピーキング機能とは、被写体の輪郭を強調しフォーカス合わせを楽にする機能です。小型のビュー・ファインダーでは非常に重宝する機能です。
ゼブラ・パターンとは、ビュー・ファインダー上に輝度レベル(Brightness)を表示する機能です。あらかじめ表示したい輝度レベルを設定しておけば、その輝度以上の領域を、白と黒の縞模様で教えてくれます。(このため「ゼブラ・パターン」と呼ばれています)
ゼブラ・パターンを100%に設定しておけば、「白トビ」(ビデオカメラが記録できる輝度の上限値を超え、真っ白になった状態)領域の警告になります。また、ターゲットとする輝度の目安としても使われます。例えば、人間の顔肌の明るい部分は輝度70%程度に合わせるとよいと言われています。
三脚
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最近はドラマでも手持ち撮影が多く見られるようになりましたが、やはり三脚での固定撮影は撮影の基本です。特に望遠レンズでの撮影は三脚なしでは非常に困難です。また、インタビューのカット編集でも、手持ち撮影だと背景が不連続に移動してしまうので、見づらい映像になってしまします。三脚でしっかり固定して撮影すれば、違和感のないカットつなぎが行えます。
高価でも良い三脚を選ぼう
良い三脚とは、以下の2点に尽きます。少々値が張っても、この2点がしっかりした良い三脚を選ぶべきだと思います。
・脚回りがしっかりしていること。望遠側でもカメラが揺れないこと。
・スムーズなパン・ティルトが行えること。がたつきがないこと。ドラッグは可変が望ましい。
良い三脚選びは、よい撮影の第一歩です。
モニター(ロケモニ)
ロケ撮影に携帯するモニターを、ロケーション・モニター、通称「ロケモニ」と呼んでいます。
通常カメラのビューファインダーはカメラマンしか覗けないので、ディレクターや他の人はロケモニで現在映っている映像を確認します。カメラマンも色彩やディテールの確認には、ロケモニを使います。
写真は、ソニー(株)
8.4型マルチフォーマット液晶モニター
LMD-9050
カラー・モニターの調整方法
ロケモニで色彩や階調を確認するためには、まずモニター画面が正しく設定されていることが必要です。また、ロケモニを見る際は、できるだけ外光があたらないように、暗い場所に置いたり、画面を覆ったりします。
(0)カラーバーをモニターに表示する
(1)ブラック・レベルの調整
右図のA、B領域が真っ黒、Cの領域がかすかに灰色に見えるよう、Brightnessつまみを調整。
(2)コントラストの調整
Dの領域の白が白トビをおこさないよう、Contrast(Picture)つまみを調整。
(3)カラーバランスの調整
“Blue Only”スイッチを入れ、両端上段・中段(下図1)の明るさが同じようになるようにChromaつまみを調節。
次に中央部上段、中段(下図2)の明るさが同じになるよう、Phaseつまみを調節。下図の4つの領域の明るさが等しくなるよう、繰り返し調節。
カメラ用フィルタ
ND(Neutral Density=濃灰色)フィルタ
NDフィルタとは、光量を一様に抑えて減光するフィルタで、基本的に被写体の色相や彩度には影響を与えないようになっています。昼間の屋外など被写体が明るすぎる場合や、絞りを開けて被写界深度を狭める場合に用いられます。
右写真は、Kenko PRO ND2
NDフィルタについている数字は、ND2、ND4、ND8、…というように2の倍数になっており、光量が何分の1に減るかを示しています。
NDフィルタ | なし | ND2 | ND4 | ND8 | ND400 |
---|---|---|---|---|---|
光量 | 1 | 1/2 | 1/4 | 1/8 | 1/400 |
絞り値の変化 (例) |
0 | 1 (f16→f11) |
2 (f16→f8) |
3 (f16→f5.6) |
9 (f16→f1.2) |
偏光(PL=Polarized Light)フィルタ
ガラス越しに撮影する場合、ガラスの反射光が邪魔をしてきれいに撮れない場合があります。
こんな時に余計な反射光を抑えてくれるのが、偏光(PL=Polarized Light)フィルタです。
偏光フィルタの仕組み
光は進行方向と直角の方向に振動する波です。普通は全方向にランダムに振動していますが、反射光には特定の方向の振動が強くなる性質があります。そこで、カメラに入ってくる光から、その特定の振動成分を取り除いてやれば、余計な反射光を抑えられる、という理屈です。
偏光フィルタは2枚のフィルタが1セットになっていて、カメラに取り付けた状態で、その1枚が回転するようになっています。除きたい反射光がもっとも弱くなるように、フィルタの角度を調節します。
その他の偏光フィルタによる効果
偏光フィルタは、ガラス越しの撮影以外にも次のような効果があります。
・水面の乱反射を取り除いて、水中の被写体を撮影する
・空の青、木々の緑など、色彩やコントラストを明瞭に表現する
効果用フィルタ
主に演出面から光学的な変化を与えるフィルタをまとめて、効果用フィルタと呼んでいます。
効果用フィルタには様々な種類があります。演出目的にそって、適切なフィルタを選択します。