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色やトーンにこだわるショートムービー制作

ビデオディレクター/ ショートムービー作家 まるやまもえる氏

 まるやまもえるさんは、企業VPや教育系のビデオのビデオディレクターをしているほか、ショートムービー作家/ビデオグラファーとしても活動しています。また、ビデオSALONやCOMMERCIAL PHOTO(いずれも玄光社刊)でも、ビデオ機材に関するレポートを執筆しています。
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 ディレクターでありながら自ら撮影するようになったきっかけのひとつは、低予算の作品でも、街の風景などの追加撮影をカメラマンに依頼 せずに撮りたいと思ったことでした。またファイルベース化が進んでノンリニア編集ソフトウェアでフルHD素 材を扱うことが容易になったことも、要因のひとつです。しかしなんといっても大きかったのは、Philip BloomGH1で撮ったハワイの夕景の作品を見たことです。『この小さなカメラで、ここまで素晴らしい映像が撮れるのか』と衝撃を受けました。それか らキヤノンのEOS 5D Mark IIやパナソニックのLumix GH1を使って撮り始めました」。

4K x Web x EDIUS 実験サイト

ネイティブ素材を扱えることからEDIUSに移行

 EOS 5D Mark IIやLumix GH1で撮り始めたころはFinal Cut Pro 7を使用していたと話すまるやまさんは、「ムービーファイルを読み込んでも、ProResコーデックに変換しないと軽快に動かないことが面倒だった」と話します。「番組制作の現場では、ProResコーデックに変換して制作するためのワークフローが組まれているので、それほど苦にはならないのかもしれませんが、私のような小規模な案件での撮影においては、撮影後に変換するという作業が煩わしかったんです。ショートムービーは2~3分の尺のものが多いので、素材すべてをProResコーデックに変換するより、毎回レンダリングをした方が速いのではないかと思っていたんです」。

 まるやまさんがEDIUSで編集するようになったのは、2011年にビデオSALONでEDIUSのレビューを担当し、作例を編集してみたのがきっかけだったと振り返ります。

 「最初はインタフェースに戸惑う部分もあったのですが、Final Cut Pro7が使えれば短期間で使いこなせるなという印象でしたね。実際に使い始めてみると、コーデックを変換することなく編集できるのは、非常に快適でした。日本で開発していて安定して動作する安心感は、使い続けるメリットにもなっています」。

レンダリングがかからないのでスピーディに作業できる

まるやまさんは現在、YouTubeとVimeoを活用して作品紹介をしています。YouTubeでは、実名でレビューを行っているチャンネル「moerumaruyama」と、ショートムービー作品を発表しているチャンネル「bluesniff」を使い分けています。Vimeoへの投稿は、アート作品的な実験などトライアルな作品に活用しているそうです。

 「bluesniffのチャンネルを見て欲しいとは思っていますが、最初に趣味で始めたチャンネルでもあるので、趣味として取り組んでいるというスタンスではあります。しかし、最近は仕事で取り組んだ動画も増えて来ていますね」。

 作品を見た人から「色に凝っている」とコメントをもらうことが多いそうですが、まるやまさん自身は「それほど凝ってはいなくて、割とアバウトに決めている」そうです。「EDIUSは、アバウトな調整がものすごくやりやすいと感じています。操作性がいいのはもちろんですが、フィルターを重ねてもレンダリングせずに動作してしまうことが多いので、調子を見ながら全体的に色を合わせていくことがしやすいんです。タイムラインを細かく移動しながら、色を感覚的に調整していくということをしていますが、タイムラインを移動する時の追随性も快適で、スムースに作業を進められます」。

 一見、Adobe After Effectsを使っているかのように見えるまるやまさんの作品は、EDIUSを使用して作られています。
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 カラー処理に関しては「淡い雲を表現したい時などは、処理の色深度をもう少し上げられたらいいな」と感じることもあると、まるやまさんは話します。でも、EDIUSは必要十分なクオリティがあると評価しています。「合成して作り込んだり、普通の人が見ても分からないような細かい部分を作り込んだり、そういう極端な作業をするのであれば他のソフトウェアを活用しているでしょう。むしろ、そこまで作り込む必要があるなら、素材作りの撮影段階からより高い色深度・ビットレートで撮る必要も生じて来てしまいますね。とは言っても、RAW現像が当たり前になっているスチールの世界でも、日本人の写真家はあまり極端な加工を好まない傾向にあると思います」と、カラーグレーディング利用についての、文化的な側面も話をしてくれました。確かに、撮影素材からカラー処理やルックを変えて、作り込むことは海外の方が日本よりも多いかもしれません。

エフェクトでは日本向けのデフォルト設定が欲しい

 まるやまさんはEDIUSを使っていて、不都合はあまり感じていないと言います。「例えば、EDIUSのタイトラー機能についても、私はタイトルを動かすような使い方をすることはなく、ごくシンプルに表示させるものが多いので、あまり不都合を感じません。仕事でクライアントから動きのあるタイトルを求められるケースでは、EDIUSで白完パケまでを作成して、After Effectsを活用してタイトルを乗せてしまいます。あるいは、複数の動画素材を動かしながら表示させる必要がある場合は、After Effectsでタイトル部分を作って、出来上がったタイトルクリップをEDIUSに読み込んでいます」。

 EDIUSには数多くのエフェクトやフィルターも搭載されています。日本向けローカライズとして、デフォルト状態の設定をもう少し使いやすい設定にして欲しいと要望を話しました。

 「どのソフトウェアを使っていても同じように感じるのですが、日本の制作者は使わないだろうなと思うエフェクトや、動きのプリセットが入っています。EDIUSは日本で開発されていますけど、この部分はやはりワールドワイドに提供しているんだなと感じさせますね。エフェクトのデフォルト設定は、すべてチェックが入っているような状態なので、必要なものだけに絞って多くのチェックを外しています。基本的な設定から、オプションの設定を追加していけるようなもののほうが使いやすく感じますね」。

 そう提案するまるやまさんですが、中間調で表現する日本人の作品作りが特殊で、他の国ではデフォルト設定の方が普通なのかもしれないとも感じているようです。

 「以前、デザイナーになりたくて来日した中国人留学生が制作していた作品を見た時に、『あっ、これは中国人の仕事だ』と感じたんです。悪い意味ではなく、色の選択や使い方、グラデーションのかけ方が、日本人の淡い色や薄いグラデーションをかけるデザインとは明らかに違っていました。陰影の影の部分を濃く描いたり、濃い紫を選択したり、留学生が育って来た環境や文化の違いを感じたんです。色の使い方は、もしかしたら欧米の感覚に近いのかなとも思いました」。

スチル系なアプローチによる作品作り

 まるやまさんは、以前、Inter BEEのグラスバレーブースで、アロハクリエイティブ香田ノブヒロさんがEOS-1D Cを使用して撮影した4K素材を編集した事例を紹介しました。短時間の素材であったとしながらも、EDIUSで快適に4K編集ができたと話しました。

 「デジタルサイネージで動画が取り入れられていますが、EDIUSは縦素材の編集もできるのがいいですね。現在のデジタルサイネージは、単に動画を表示するだけですが、4K素材が使われるときは写真に変わるアプローチとして活用されていくと感じています。写真の一部がGIFアニメーションで動くような表現は、動いている部分が抽出されて強調されるんです。例えば、写真で止まっている顔で、目が瞬きだけしているというのは、もの凄く印象づけられると思います。こういう表現に4Kが活用されると、テレビが4K化してきれいな映像になる以上に面白い表現が生み出されていくのではないかと期待しています」。

 まるやまさんは、自分でデジタル一眼ムービーを撮り始めたことで、「動画系から来た人も、スチル系から来た人も、両方の人と知り合えたことが大きな収穫だった」と話します。「動画系の人は決められたワークフローに乗せることに慣れていて、安定して撮れることがまず重要ですね。ワークフローに合わせるために、さまざまな状況に対応できるのですが、解像度を重視した画作りや微妙なニュアンスにこだわった画作りという部分にはあまり興味を示さないですね。スチル系の人は、自分で機材を選んで購入していますし、作風のために試行錯誤するのに慣れていて、貪欲に取り組んでくる人も多いですね。動画系、スチル系、それぞれに一長一短はあるのですが、私は後者の画の方向性があるものが好きなんだと気付きました。EDIUSが使いやすくて使い続けていますが、作品作りをするためのノンリニア編集ソフトウェアの部分は、自分のやりたいことを実現しやすいものを使うことになるのかもしれませんね」。

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空気公団×ビデオSALON× EDIUS「夜はそのまなざしの先に流れる」

 

Memorize Lens – moeru


まるやまもえる氏 Profile
フリーのビデオディレクターとして、企業VPや教育系ビデオの制作に携わっているほか、パナソニックLumix GH1/キヤノンEOS 5D Mark IIによる表現を追求したショートムービー作家としても活動中。ビデオサロンで機材レビューの執筆もおこなっています。

(取材:イメージアイ秋山謙一)

 

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